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こうして、信廣一行に郎党の工藤九郎左衛門尉祐長が加わった。
ここで初めて、信廣の従者である武士も、お互いに名乗りあった。
「信廣さまが家子、佐々木三郎兵衛門尉繁綱に御座る。お見知り置きを。それにしてもお主、かなりの手練よの。一時刀を交えたのみで、そちの腕はすぐに解ったわ」
と笑った。
「この者は、血の気が多いので、儂も時々苦労するが、豪の者じゃ。仲良くしてやってくれ」
と、信廣は二人が打ち解けられるようにと、からかい半分に紹介したが、この二人は既に刃を交え実力を知り合った者同士なので、信廣の気遣いが無くとも、すぐに意気投合したようだった。
この二人が、武田家出奔から信廣を支える、両腕となるのである。
さらに今回の追走した武田家の足軽の中でも、何人かは信廣を慕っている者がいて、彼らは戦場で常に信廣の武勇や将器の大きさを近くで見て触れていたので、城に逃げ帰らず、近くで隠れて、この三人のやり取りや会話を見聞きしていた。
この会話を聞いていた者たちの何人かが、会話が終わったのをみて、物陰からゾロゾロと出て来た。
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