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「御意!やっと面白くなって来ましたな。このまま負け犬のように逃げるだけでは面白くありませぬからな」
と、不敵に笑った。と同時に、従者もあるじの意図を理解し、逃げていたニ騎は突如踵を返して、二人の処遇を巡って一悶着している、追っ手の集団に襲いかかった。
てはじめに信廣は、得意の強弓で追っ手の先陣を射殺した。
追っ手の集団は不意の奇襲をされた事もあるが、二人の手際の良さに次々と矢で射ぬかれ、そして切り伏せられて大混乱に陥った。
そんな中、初めに二人に声を掛けた侍大将は、直ぐにこの切り合いが無為な事だと悟り、味方の命を無駄に失う事を避けさせる為に、機転を利かせて自らが引き連れて来た手勢に向かい、
「引けぇ~ぃ!引けぇ~ぃ!!」
と退却を命じた。
しかし、自らはこの事態の顛末を見届けるのと、配下全員が無事に退却できるようにと、殿を務めるつもりでこの場に残る事にしたが、この退却の大きな掛け声を出したのがマズかった。この声に存在を気づいた従者、三郎兵衛門の方が、
「この中で骨のある奴はお主のようだな!某と勝負せよ!」と大喝しながら切りかかって来た。
侍大将のほうも、むざむざと殺される気は無いので、応戦して何合か刀を交えた。
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