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が、侍大将の方が、本気で切り合いをする意思をその刀からは感じず、どちらかと言うと防戦に努めている感じで、しかしかなりの手練らしい事は三郎兵衛門も感じとった。
この様子を見ていた信廣が、
「その者はよい!他の奴らを片付けろ! 否、寧ろもう一人の大将を真っ先に討つのだ!」
と指示したので、この侍大将からは離れ、再び二人連携して、もう一人の主戦派の侍大将に狙いを変えた。
直ぐにその侍大将は見つかり、それに慌てふためいていたが、二人の連携で一気に侍大将を討ちとってしまった。
直ぐにも従者の三郎兵衛門は、鬨の声を挙げるが如く、
「大将討ち獲ったり!我らの勝ちぞ!」
と、追っ手の足軽たちに聞えるように叫んだ。
将を討ち取られたので、命を賭けてこの手練二人の為に成仏しようと思う者はいない、足軽たちは一斉に城の方へ逃げて行った。
残されたのは、もう一人の事情が解っていなかったと思われる、侍大将ただ一人となった。
「信廣さま、見事で御座いました。拙者、感服致しました。しかし事情を知らされていなかったとは言え、信廣さまに弓ひく一団に加わっていたのは事実、配下の方とも切り合いを致した。我が命、如何ようにも処分されたい」
と、神妙な面持ちでその場でひざまづき、降参した。
「そのほう、名をなんと申す」
と信廣が尋ねると、男は、
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