第三章  ー 北行 ー

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第三章  ー 北行 ー

 信廣の小武士団は、奥州の奥深くまで入り込み、現在の岩手県と青森県の県境辺りまで北上していた。  鎌倉からかなりの距離を移動してきたが、どうやら無事に奥州南部氏の本拠、三戸(さんのへ)の館へ到着したようだ。  奥州で威勢を張るだけあって、館も鎌倉府に負けず劣らずの立派な構えな建物だった。  その館の門前に着き、門番の兵に、甲州南部氏からの紹介で、甲斐源氏で同族の武田信廣が加勢にやって来た事を告げた。  門番の一人が信廣一行来訪の報告をしに、中へ入って行った。暫く待っていると、やがて先程の門番が、入館するために信廣を中へ誘った。  三郎兵衛門、九郎左衛門を初めとした、信廣配下の武士団にも屯所を宛がわれて、配下の者たちはそちらへ移動して、旅の紐を解いた。  奥州南部氏当主の名は、光政(みつまさ)といった。この頃は勢力を東北地方北部全域に広げようかという動きをみせていて、太平洋側だけでなく、日本海側にも勢力を広げはじめ、日本海側に割拠する豪族とも紛争を始めていた。そんな野心的な動きをみせる奥州南部当主の光政とは、一体どんな人物なのだろうか?と信廣は思案しつつ、光政との謁見の場へ向かっていた。     
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