12人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
先輩に恋をしたのは、私が中学1年の時だった。卒業生を送る会、通称『三送会』でステージに立つ先輩に恋をした。
三送会では、有志が色々な出し物をステージで披露する。歌を歌ったり、楽器を演奏したり、寸劇や漫才をしたり。
基本的には送る側の1、2年生が芸を披露するのだが、希望する3年生がいたら出し物に参加することもあった。
先輩は、サッカー部の後輩を集めて大喜利をしていた。ステージ上に並べられた座布団に座り、紙で作られた『H楽』の名札を付けた先輩が司会者。1、2年生の部員6人が解答者として並ぶ。
男子中学生が好きそうなアホネタ、エロネタ満載で観客は大爆笑だった。
私は、笑うのも忘れて先輩に見とれていた。ただただ、先輩を見つめて過ごした。
その日から、私は校内で先輩を見かける度にドキドキが止まらなくて…会えたのが嬉しくて苦しくて、初めての感情に戸惑う日々だった。
間違いなく、これが私の初恋だ。
でも、私が先輩に恋をした2週間後、先輩は中学校を卒業していった。
私は先輩への想いをもて余したまま、先輩を見送った。
それから、2年の月日が経って、私は先輩と同じ高校に進んだ。先輩を追いかけてというわけではないが、この高校に進学を決めた時に先輩の顔が浮かんだ。
先輩にまた会えるかも知れない。入学式の朝、念入りに鏡の前で身だしなみを整え高校に向かった。
「川瀬、また同じクラスだったぞ。腐れ縁だな。」
昇降口に貼り出されたクラス分けを先に見てきた冬馬が、私を見つけて駆け寄ってくる。
冬馬とは中学の3年間同じクラスで、同じ高校に進学をしていた。
「冬馬でも、知り合いがいないよりマシかぁ。」
「本当は嬉しいくせに。」
冬馬の肩パンチが飛んでくる。
「女子に肩パンチするヤツと一緒になって嬉しいわ けないでしょ!」
かなり本気の肩パンチに私は顔をしかめる。
コイツは本当に加減を知らない。
最初のコメントを投稿しよう!