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《三日目》
昨日と変わらず、今日も暑い日だった。
ベランダで彼女のことを見続けている僕の体を、粘ついた汗がまとわりついてくる。
それでも、僕はこの場所から離れる事をしない。どんなに暑くても僕は、彼女の姿を眺めていたい。出来ることならば、もっと近くで…彼女の顔をジッと眺めてみたい。どんな目をしているのか、どんな口をしているのか。髪はどんな手触りなのか…近くで彼女の鼓動を聞いてみたい。
今、僕が住んでいるマンションと彼女が囚われているマンションの間には小さな広場を挟んでいる。
そのせいで、聞きたいのに彼女の声は全く聞こえない。この耳で、彼女の声を聞くことが出来たら…それだけで体中の性欲が満たされていくだろう。彼女の声にどれだけゾクゾクして、興奮するのだろう。
美しく、研ぎ澄まされた声。
僕の中で、毎夜響き続ける彼女の声は美しく朽ちることがない水のような声。
鳥の囀り。
木々の唄。
どんなに美しいものよりも、美しい彼女の声。
これは、だだの夢見事。僕の夢だ。
彼女は僕の夢の中で、細く白い指で僕の服をゆっくりと脱がしてから…彼女の体を覆う白いワンピースをゆっくりと焦らしながら脱ぐ。
そして、僕の体をゆっくりと撫でるように白い指を這わせてくる。そして、か細くも芯の強い声で僕の名前を呼び、僕の体を求めてくる。
これは、僕の欲望に過ぎない。
彼女の姿を目にした時から、僕の理性はあっけなく崩壊していった…性欲と愛情の塊。そんな存在になってしまった気がする。
見ているだけで良いなんて、ただの綺麗事に過ぎない。本当は、この手で彼女の服を剥ぎ取り、その白い肌を晒して僕の下で喘がせたい。
僕以外の男が、触れることなんて許せない。
それでも、今の僕は傍観者に過ぎない。
ビデオの中の彼女は、相変わらず上手に生活をしていた。彼女の表情をしっかりと見ることは、出来ないけれど…僕には、彼女の表情が分かる。
愛しているから、触れられなくても僕には分かる。
そして僕は、彼女の夢を見るために僕は眠りにつく。
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