処女作

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《四日目》 太陽は、なかった。 沢山の雨粒が降り注いでいた。 ビデオのスイッチを切り、ビデオを部屋の中にしまった。せっかく撮ったのに雨で壊れてしまっては勿体ない。 大雨のせいで、僕の部屋からは彼女の姿が見えない。 僕は、今での短い映画を見返す。 固定画面の中で彼女は、毎日のように泪を流しながら食事を口にする。なんの変化もない彼女の映像。 近付く事の出来ない映像では、彼女の姿がちゃんと分からない。それでも、僕にはその小さな姿が愛おしく淫らに見える。本当に美しい。僕の理想そのものだった。彼女の小さな姿だけなのに、僕は簡単にイッてしまいそうになる。どんなAVよりも彼女の方が淫らで官能的だった。 僕は少しでも、彼女の姿をこの目で見ていたい。 僕は、彼女に恋をしている。 今すぐにでも、彼女を抱きしめて、愛を囁きながら同じベッドの中で朝を迎えたい。 そして、玩具のように彼女の体と心に僕だけを刻み込みたい。彼女が僕の事を忘れないよう、僕の事しか考えられないように。それが、どんなに自分勝手で、自己満足なことか分かっている。それでも、僕は彼女の全てを僕という存在で汚したい。 触れられないからなのか、近づけないからなのか分からないけど…僕の中で彼女への感情が狂ったように湧き上がってくる。それは、止めどない感情。 人を愛するとは、酷く切ない。 こな先のことを考えていた。 彼女は、このまま『犯人』の部屋で何をしていくのだろう。ずっと、『犯人』の機嫌を伺いながら囚われた姫君を演じ続けるのだろうか。 そして、『犯人』は従順に従い続ける彼女をどうするのだろう?自分の欲望を満たして、要らなくなったら捨ててしまうのか。それとも、永遠に飼い続けるのか。 それとも、警察がいつか踏み込んで来て囚われた姫君を助けて…この物語をハッピーエンドで終わってしまうのだろうか? 雨のように僕の心は、どんどん憂鬱になっていく。
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