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「前も言ったけどさ、俺結構前城さんのこと可愛がってんだよね」
「ひゃ、ひゃい」
「そんな可愛がってるコが悩んでたことをこんなんなるまで気づかないで、しかも全く相談のひとつもされなかった俺の情けなさ、分かる?」
「………っ!」
そうだ。
今なら分かる。
相川さんは優しい。
優しい人は自分を責めるんだ。
例え私がそれを望んでいなかったとしても。
そのことを、“自分が嫌われたくない”一心だった私は、気付かなかった。
……結局、私は“迷惑を掛けたくない”なんて、他人のことを考えてるように言って、自分が一番可愛かったのかもしれない。
「迷惑とかそんなんどうでもいいから、そういうことに配慮してほしいんだけど」
「……ごへんなはい」
心から謝ると、相川さんはやっと解放してくれた。
そして打って変わって、相川さんは摘まれて赤くなった頬を指の背で撫でた。
「……一生後悔するとこだった。
ほんとに良かった。間に合って」
止まりかけてた涙が、またぶり返しそうになる。
「ごめんね、気付いてやれなくて。
怪我もさせちゃって」
どうして最後の最後で優しくするのか。
優しくされるとだめだ。
涙が堪えられなくなる。
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