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「てか、今暇?」
突如、相川さんが仕事モードに切り替わった。
「私ですか?」
「前城さんと売り場、どっちも」
こっちに来る前の売り場を思い描いてみる。
確か、そんなにお客さんはいなかったような。
「割と暇だと思います」
「マジ? じゃあさ、売り場替え手伝ってほしいんだけど」
ってことは……また、売り場に戻るってことだよね。
咲さん、と笑いかけてくる、あのお客さんの存在が頭に散らついた。
「いい?」
「え。あ、はい! 手伝います」
瞬時にそれを振り払い、力強く頷く。
そんなこといちいち気にしてたらキリがないし、なにも出来なくなってしまう。
……売り場に出たくない、なんて我儘、通用するはずがない。
相川さんの後に着いていき、指示をもらいながら商品を並び替える。
途中、あのお客さんは姿を現したけど、近くに相川さんがいると分かった途端に踵を返した。
それから営業終了まで、あのお客さんは姿を現さず、密かに相川さんに感謝した。
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