5. 「馬鹿」と「イイコ」

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男は、またもや吹っ飛んだ。 地面に倒れこむ男に、相川さんはまだ足りないのか、再度掴みかかろうとする。 そこで、私の身体はやっと動いた。 「……なにしてんの、前城さん」 背後から抱き着いた私に、邪魔だと言いたげに呟く相川さん。 「もう、これ以上はやめてください。……お願いです」 「……なんでそこで前城さんがかばうかな」 ハ、と笑い捨てる相川さんに、「違います」と即座に否定する。 「……それ以上は、相川さんが痛いでしょう」 だからお願い。 もうやめてほしい。 そう願って、抱き締める腕に、更に力を込めた。 無抵抗の相川さんは暫く黙っていたけど、やがて「オッサン」と口にした。 「そのツラ、二度と見せんなよ」 「ひっ……!」 男は顔を抑えながら、一目散に逃げ去って行った。 それを確認した私は安堵し、腕の力を解いて相川さんの背中から身を離す。 しかし、その腕を取られ、ぐいっと強引に引っ張られてしまう。 「………え、相川さん?」 何故だか、今度は相川さんの腕の中に、私がいる形となった。
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