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男は、またもや吹っ飛んだ。
地面に倒れこむ男に、相川さんはまだ足りないのか、再度掴みかかろうとする。
そこで、私の身体はやっと動いた。
「……なにしてんの、前城さん」
背後から抱き着いた私に、邪魔だと言いたげに呟く相川さん。
「もう、これ以上はやめてください。……お願いです」
「……なんでそこで前城さんがかばうかな」
ハ、と笑い捨てる相川さんに、「違います」と即座に否定する。
「……それ以上は、相川さんが痛いでしょう」
だからお願い。
もうやめてほしい。
そう願って、抱き締める腕に、更に力を込めた。
無抵抗の相川さんは暫く黙っていたけど、やがて「オッサン」と口にした。
「そのツラ、二度と見せんなよ」
「ひっ……!」
男は顔を抑えながら、一目散に逃げ去って行った。
それを確認した私は安堵し、腕の力を解いて相川さんの背中から身を離す。
しかし、その腕を取られ、ぐいっと強引に引っ張られてしまう。
「………え、相川さん?」
何故だか、今度は相川さんの腕の中に、私がいる形となった。
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