5. 「馬鹿」と「イイコ」

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「………へーき?」 「えっ?」 「もう怖くない?」 さっきまで人を殴っていたとは思えないような、徹底的に私を甘やかそうとする相川さんの声。 抱き寄せられているせいで、ダイレクトにそれが伝わり、耳元がくすぐったい。 「だ、大丈夫です」 「……ほんとに?」 「はい……」 だから離してほしい。 落ち着かないから。 しかしそれどころか、相川さんは更に腕に力を込め、より身体を密着させた。 私の首元に顔を埋め、ちょっとの隙間も許さない、と言ったように抱き締められてしまう。 「っ……あの、相川さん、ちょっと」 これは流石に、色々と無理だ。 キャパオーバーを訴えるが、「……ごめん無理」と速攻で却下される。 え、いや、私の方が無理なんですけど……。 「存在確かめたい」 「……はい?」 「前城さんがほんとに、此処にいるって証拠」 そう言われて、ああそうか、と納得した。 確かにこれは、私の存在や形を確かめているような抱き方だ。 心配で心配で仕方ない、と全身で言われてるみたい。
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