5. 「馬鹿」と「イイコ」

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「靴脱いで、足シートに乗っけときな」 「はい……本当、すみません」 言われた通りそうすると、相川さんは運転席に乗り込み、エンジンを掛け、車を発進させた。 「……あの」 それから5分くらい走ったところで、相川さんに話しかける。 「ん?」 「思ったんですけど……バンソコとか湿布なら私の家にもありますし、私の家でも大丈夫なんじゃ」 あそこからだと、私の家の方が近かったし。 相川さんの家に行く方が手間な気が。 「……だって、今日も一人なんじゃないの」 「……っ!」 バックミラー越しに目が合い、息を飲んだ。 もしかして、そういうこと? それを気にしてくれてたの? 「家に上げさせてくれる、ってなら前城さん家向かうけど」 「……私の家は、ほんとに、なにもないので」 ソファーやテレビ、ダイニングテーブル。 そういった、一般的な家庭にあるものはある。 だけど私の家には、“家族感”がまるでないのだ。 温かみが一切ない。 そういうのを、他の人に見られるのは……少し抵抗があった。
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