5. 「馬鹿」と「イイコ」

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「はい、終わり」 「すみません、ほんとに。 ありがとうございます」 相川さんの足から自分の足を退け、改めてソファーにちゃんと座った。 相川さんは私に身体を向けたまま、ソファーの背もたれに頬杖をつき、私をガン見。 ………な、なんで? 耐え切れずちらりと相川さんを一瞥すると、やっぱり射抜くような目で私を見ていた。 「ど、どうしたんですか」 「……なんでこんな目に遭ったの、前城さん」 いきなり核心を突いてきた。 ……話さなきゃいけないのは分かってる。 でも、何処から話せばいいんだろう。 話が上手く纏まらない。 「全部聞かせて」 やっぱり相川さんにはお見通しで、私が口を開くより前にそう言われる。 「……あの人、お店の常連さんだったんです。 最初は全然普通の人で、私も普通に接してたんですけど」 本当に普通の人だった。 ちょっと気が弱そうな、普通のお客さん。 けれど、いつからか普通ではなくなっていった。
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