5. 「馬鹿」と「イイコ」

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多分、馬鹿にされてるんだろうけど……。 まさか、このタイミングで馬鹿にされるとは思わなかった。 ……でも同時に、馬鹿にされて当然だとも思う。 「どっち?」 「馬鹿……なんだと思います」 「ふーん、なんで?」 「……相川さんに、迷惑ばっかり掛けてるから」 自分の力でどうにか出来なかった上に助けてもらって、挙げ句の果てには手当てまでしてもらってる始末。 とても、賢いとは言えない。 「あー、違うな」 「………え?」 「イイコ過ぎて馬鹿なのか」 相川さんは腕組みをし、「つーか」と続ける。 「迷惑とか、一回も思ったことないけど」 嘘だ。 こんなに巻き込んでしまったのに、迷惑に思わないわけない。 「それよりも、前城さんはもっと早く俺に言うべきだったんじゃない?」 「………」 「だから、こんな大ごとになってる」 静かに、諭すような相川さんの口調。 間違いない。 相川さんは、今怒ってる。
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