5. 「馬鹿」と「イイコ」

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「そりゃあ、一人でやれることが多いに越したことはないと思うけど。 ……残念なことに、やっぱ人間って、なんでも一人で出来るわけじゃないんだよね」 「………」 「一人でやれるのか、やれないのか。 前城さんは、その判断力をもっと身につけなきゃいけない。 今回のことは、真っ先に周りを頼るべきだったよ」 分かってはいた。 自分一人の力じゃ限界があるってことは分かってはいたし、自分がそこまで力量がある人間だとも思ってない。 ……だけど、それ以上に、 「それとも、人に頼るのが怖い?」 「──っ!」 あからさまに動揺を見せた私に、相川さんは更に追及する。 「なにが怖い? 言ってみ」 ……どうして、この人は見逃してくれないんだろう。 私の中の弱い部分を、そのままにはさせてくれないんだろう。 「……誰かに頼って、嫌な顔されるのが、怖い……です」 そして私も、どうして、この人の前では正直になってしまうんだろうか。
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