5. 「馬鹿」と「イイコ」

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暫く涙が止まることなく、ひっくひっく、としゃっくりを上げながら涙を流し続けていると、 「下手くそな泣き方」 いつもみたいに、意地悪な相川さんが顔を出す。 「だ、だ、って……、泣くの、なんか、久し振りですもっ、ん」 上手な泣き方なんて分からないのだ。 そんな私に、相川さんはやれやれ、と言いたげに笑いながら私の涙を親指で拭う。 「馬鹿だね、ほんとに」 「し、失礼な」 「適当に甘えときゃいいのに。 なんで一人で頑張ろうとすんのかね」 「………だって」 「第一、ちょっと頼ったからって嫌な顔するヤツなんか、ウチの店にいねーと思うんだけど」 「それは……、冷静になってみると、そうなんですけど、」 「あー、やばい。また腹立ってきた」 ぐにぃ、と頬っぺたを摘ままれ、怒りをぶつけられる。 これが結構痛く、「いひゃいでふ」と痛みを訴えると、ざまあみろと言われてるかのように笑われる。 笑いどころじゃない。 睨みを利かすものの、相川さんにはそれは一切通じず、全然離してくれそうもない。
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