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「ふ、また泣くの?」
「……今度は上手に泣きます」
「ハハ、随分感情表現が豊かになったもんで」
そうさせたのは、相川さんのくせに。
「ねー、全然上手くないけど」
再びぽろぽろと涙を溢す私に、相川さんは呆れたようにそう言う。
自分で言っておいてなんだけど……泣き方に上手いも下手もあるものなのか?
「でも、いいね。泣いてる前城さん」
……なんかよく分からない褒め言葉をもらった。
どういう意味ですか、と聞こうとするが、泣いてばかりいるせいなのか、眠気が唐突に襲ってきた。
「眠くなったの?」
私の様子を見て悟られたようで、無言でそれにコクリと頷く。
泣くのにも体力を使うんだってことを、改めて知る。
今すぐにでも寝れちゃいそうだけど、相川さんには私からも聞きたいことがたくさんある。
「眠いならいいよ、寝て」
「………でも。相川さんに、聞きたいことが」
どうしてあの場に相川さんがいたのか。
加瀬さんと一緒なんじゃなかったのか。
聞きたいのに、睡魔がそれを邪魔をする。
「いいじゃん明日で。
今日は、もう寝ちゃいな」
………そう言うなら、いいのかな、明日で……。
最後に、おやすみ、という声に促されるまま、私は深い眠りに就いた。
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