5. 「馬鹿」と「イイコ」

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「ふ、また泣くの?」 「……今度は上手に泣きます」 「ハハ、随分感情表現が豊かになったもんで」 そうさせたのは、相川さんのくせに。 「ねー、全然上手くないけど」 再びぽろぽろと涙を溢す私に、相川さんは呆れたようにそう言う。 自分で言っておいてなんだけど……泣き方に上手いも下手もあるものなのか? 「でも、いいね。泣いてる前城さん」 ……なんかよく分からない褒め言葉をもらった。 どういう意味ですか、と聞こうとするが、泣いてばかりいるせいなのか、眠気が唐突に襲ってきた。 「眠くなったの?」 私の様子を見て悟られたようで、無言でそれにコクリと頷く。 泣くのにも体力を使うんだってことを、改めて知る。 今すぐにでも寝れちゃいそうだけど、相川さんには私からも聞きたいことがたくさんある。 「眠いならいいよ、寝て」 「………でも。相川さんに、聞きたいことが」 どうしてあの場に相川さんがいたのか。 加瀬さんと一緒なんじゃなかったのか。 聞きたいのに、睡魔がそれを邪魔をする。 「いいじゃん明日で。 今日は、もう寝ちゃいな」 ………そう言うなら、いいのかな、明日で……。 最後に、おやすみ、という声に促されるまま、私は深い眠りに就いた。
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