6. 不変と変化

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朝が来た。 ソファーから起き上がり、寝ぼけ眼を摩る。 目がいつもより重たいのは、昨夜散々泣き散らかしたせいだろう。 ……そうだ。泣いたのか、私。 ソファーに寄りかかって寝ている相川さんを見下ろす。 前回は酔っ払った姿、今回は泣き顔。 一体私は、この人の前でどれだけ醜態を見せるつもりなんだろう。 もう頭を抱えるしかない。 「……あれ」 不意に、自分に掛かった毛布の存在に気が付いた。 自分で掛けた記憶はない。 てことはこれ、相川さんが掛けてくれたのかな。 ……こういうの、無言の優しさって言うんだろうな。 眠っている相川さんに起こさないよう毛布を掛け、ソファーからそっと下りる。 とりあえず顔だけでも洗いたい。 いいかな、洗面台借りても……。 あ、でもタオルとか勝手に使うのよくないよな。 洗濯物増えちゃうし。 どうしよう、とうろうろして悩んでいると、「おきたの……?」とむにゃっとした相川さんの声が聞こえた。
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