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「まあ、いいや。
その顔も見れたことだし」
その顔、とは、今のこのあたふたしてる顔のことか。
「……悪趣味、です」
「そうだね。人の寝顔観察すんのも悪趣味だと思うけど」
正論をもろに喰らい、ついに押し黙ってしまう。
相川さんはそんな私に含み笑いをしながら、私の腕を引っ張り、立ち上がらせる。
右足に体重を掛けないように、されるがまま立ち上がる私。
「毛布ありがとね。結局起きちゃったけど、寝かせようとしてくれたんでしょ?」
……意地悪されるのに、相川さんを嫌いになれない理由。
こうやって散々からかわれた後に、それを上回るほどの優しさを見せてくるからだ。
多分一生、私はこの人のことを嫌いにはなれない。
「……いえ、全然。
それを言うなら、相川さんだって私に掛けてくれたじゃないですか、毛布」
「ハハ、まあね」
ぴょこんと跳ねた寝癖を揺らしながら笑う。
それもちょっと可愛いな、と思ったのは、悔しいから内緒にしておこう。
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