6. 不変と変化

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……何か言いづらいことがあるってこと? その表情の意味は、そういうこととしか思えない。 「んー……言わなきゃだめ?」 やはり、相川さんは躊躇している。 あの自由奔放な相川さんが、何故。 ただ、なんであの場にいたのか、を聞きたいだけなんだけど。 遠慮気味に「お願いします……」と言えば、相川さんは困ったように笑う。 「……昨日、様子変だったじゃん。前城さん」 「え、……変でした?」 「俺が“なんか悩み事?”って聞いたとき。一瞬ギクッて顔したの、気付いてない?」 「………」 バレバレにも程がある。 「昨日、ずっとそれが頭に残ってたんだよね。 まあ、今んなって原因わかったけど、……やっぱ気になってさ」 「……それじゃあ、もしかして」 たかがその、一瞬の表情の変化を気にして? そんなわけない。 いくらなんでも、そんなのお人好しすぎる。 だけど相川さんは、また先程と同様に、罰が悪そうに私から目を逸らしていた。 それが全てを物語っているようだった。
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