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そんな俯く私を、相川さんは意味ありげに含み笑いをしながら覗き込んでくる。
「あ、なんだ」
「……なんですか?」
「泣いてんのかと思って」
少し残念そうなその言葉に、眉を顰めた。
「泣いててほしかったんですか?」
まるでそう言ってるように聞こえる。
相川さんは躊躇わず「うん」と肯定してみせた。
「泣いてる前城さん見るの、好き」
……この人、小学生か何かなのか。
大人のくせに、時折子供みたいな発言するから酷く困惑してしまう。
って、違う違う。
今はそうじゃなくて。
「……私、真剣に話してるんですけど」
「ハハ、そだね。
まあでも、前城さんが今考えてることなんて、俺にとったらそんなもんってことだよ」
「え……」
どういうことだろうか。
声に出すよりも早く、相川さんはその答えをくれた。
「気にしすぎ。分かんないことがあれば誰だって聞きたくなるでしょ。
それのなにが情けないの?」
自己嫌悪で一杯になった心に、その言葉がじんわりと染み渡っていく。
なんでだろう。
相川さんの言葉は、不思議と素直に受け入れてしまう。
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