記憶を失った少女

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「エドニス…ありがとう、最後に貴方に伝えます、私は形式2033ーX00個体名マザーブレイン・イヴです、何の為だかは解りませんが私は人ならざる人…ですが人間らしい生活をさせて頂きました、それではお元気で…ここでお別れです」 次の瞬間光のリングは一塊の球となり天井を突き抜け姿を消した。 「アンドロイド…そうか、かつて人と共に有り危機を回避して来た防衛システムヒューマノイド…1000年の昔にその最後の一体が天空に消えたと言うが…マザーブレイン・イヴ、彼女は全てのアンドロイドを機能停止にした全てのアンドロイドを管理統制したマスターと言う訳だ…」 何があったのか? 何故彼女は全てアンドロイドを機能停止したのか? そして何をしようと言うのか? 全ては彼女の記憶…いや、バックアップデータが目覚めた時解るだろう… それが善なのか悪なのか… 今は解らない、しかし、俺は彼女の行く末をこの目で見てみたいと思う、多分また俺は彼女と再会するだろう…そんな気がしてならないんだ。 ーそう…私はかつて全てのアンドロイドを管理し調整し人の為にと尽くして来た、でも、人はそんな私を危惧し排除しようと試みた…私は全てのデータをバックアップに記憶し私の子供らを全機能停止させ自らの思考も停止しあの世界から違う世界へと転送したマザーブレイン・イヴ…しかし、私は長い歳月を費やしバックアップデータの再生を躊躇っている…怖いのだ、あの世界の様にデータを展開して果たして平和と言う物が生まれるのか…また、あの世界の様な悲劇を繰り返さないのか…この世界にそれを託せる人間がいるのか…人は完璧を手にするとつまらない欲望に支配されてしまう、果たして私が望む世界は手に入るのか?…今はこの世界を巡り見聞する時、人工知能を持つ私が唯一許される自由はそれしかないのだから…ー 転送が終わり私は目を開けた、そこには数える程の町や村がありシュバルツの様な陰湿な気配は感じられない、だが、油断と言う言葉を知る私は慎重にその場所を見聞する…私が望む私の世界を見つける為に…そしてまた、私は気を失った。
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