第一章「粉雪の降る夜に 6」

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ホント、ああいえばこういうんだから……。   小夜は微笑みながら、ゆっくりと如月に抱きつく。   すると彼の華奢な体は氷のように冷たかった。恐らく何時間も私を探し続けてくれていたんだろう。   ごめんね、いつも心配ばかりかけて……。   小夜は彼の胸に顔を埋める。 久しぶりのダーリンの薄い胸板……。   彼のゆっくりとした鼓動は、いつも私を安心させてくれる。   彼女が心の中でそう呟いた時だった、如月が静かに口を開く。   「……雪だ」   ホントだ……。     空を見上げると、いつの間にか星空は消えていた。   その変わり美しい粉雪が静かに降り注いでくる。   なに? このロマンティックなシチュエーション……正直、出来すぎでしょ?   小夜はそう思いつつ、雪を珍しそうに眺める如月に視線を移した。   すると彼は「どうした?」と言って小首を傾げる。   「キスしたいんですけど、いいですか?」   「……ダメと言ってもするんだろ?」   この状況よ、普通は男から仕掛けてくるのが礼儀ってもんでしょ?   小夜はそう思いつつ無言で頷いた。
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