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失敗した、かもしれない。
下駄箱から上履きを取り出し、スニーカーをしまいながら、榊原龍一は思った。
幻の鉢植えに驚いて立ち止まってしまったのはともかくとして、そのあと辺りを見回したのは失敗した気がする。
確実に目があった。
あの、幽霊と。
「やばい、よなー」
小さく呟く。
「何が?」
「うわっ!」
後ろからかけられた声に、慌ててのけぞると級友、巽翔の姿がそこにはあった。
「朝から失礼だな」
むっとした様子もなく言われる。
「あ、うん、ごめん」
「で、どうした?」
「えっ?」
声が裏返る。慌てて一つ咳払い。
「いや、なんでもないよ。大丈夫だよ。気にしないで」
ほら、教室行こうぜ! とか我ながらびっくりするぐらいの白々さでそういうと、翔の背中をおした。
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