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春先に巻き込まれた、こっくりさんをはじめとする幽霊騒動。あの事件で知り合ったお祓い業の女性・沙耶に龍一は絶賛片思い中だ。
そんな彼女は、龍一が幽霊などにかかわることにいつも渋い顔をしていた。普段は温厚な彼女が、それだけは絶対に譲らなかった。
なぜなら、龍一はただ視えるだけだから。沙耶とは違って、祓う能力などないから。
だから、
「軽がるしく同情してはダメ。生きている人間を連れて逝きたがるものなのだから、可能な限り知らないふりを決め込みなさい」
何度も言われていたのに、それなのに、っさりと目があってしまった。
そんなこと、せっかく忠告してくれた沙耶にバレたら、何て言われるかわかったもんじゃない。
またなの? っていう少し呆れたような視線が容易に思い浮かぶ。そして、同時に、心配したような顔を彼女はするだろう。あの顔は見ていて切ないので、出来るだけさせたくない。心配してもらえるのは嬉しいんだけど。
ばれないように、ばれないように。
沙耶と同業者の、お祓いを生業としている翔にばれたら、必然的に沙耶にもばれる。それは避けなければ。
改めて心に誓う。とりあえず、もうあの道は通らないようにしよう。
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