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寝不足でがんがん痛む頭を右手で押さえる。
日曜日の早朝。夜よりは朝がいいな、という理由。
龍一は、あの一軒家の前に立っていた。
話し合いで、どうにかなるかもしれないし。視えるのだから、自分にならどうにかできるだろうし。いつも沙耶がやっているのを見ているし。
これ以上、夢に悩まされるぐらいなら、直接話した方がいい、に決まっている。
よしっと気合いを入れる。
日曜日の早朝は、人通りがない。
そっと、ドアに手をかける。
かちゃり、
鍵は開いていた。
ふぅ、っと息を吐く。
「おじゃましまーす」
そうして、一歩踏み出した。
家の中は、もう何年も人が住んでいないようだった。
埃っぽい。
何故か、床で花瓶が割れている。片付けられて、いない。
二階だったよな、と思って階段をのぼる。
と、思ったら熊のぬいぐるみが上から転がってきた。慌てて避ける。
避けきれなかった右手を通過して、ぬいぐるみは消えた。
くすくす、と上から笑い声がする。
やっぱり来なきゃよかった、と少し思う。
それでも、諦めて足に力を入れた。
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