第1章

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 主人公から段々とカメラが離れていく。顔も認識できないくらい離れ、始めと同じような構図になっていく。と同時に次第に暗くなり、エンドロールが流れ始めた。  客が一人、また一人と席を立つ。私はまだ立たない。いつも最後まで見ようと思う。サスペンスも好きな私に言わせると、もしかして最後に何かあるのでは無いかと邪推してしまう。まあ大抵無いのだが。  エンドロールも終わり、館内が明るくなった。客ももう数人に減っている。ようやく私も席を立つ。まあまあ面白かった。驚きや涙を流すほどの感動はなかったものの、前々からの期待感を裏切らない作品ではあった。昨今の過剰すぎる宣伝を加味すれば、上出来な方だ。    3番シアターから出て、人の流れに合流した。他の映画も同時刻に終わったらしく、何十人もの人間が同じ方向に向かって歩いている。遅すぎず速すぎず、他人のスピードに合わせながら歩く。  余韻も何もあったものじゃない。せっかくの意識がずれてしまう。
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