第1章

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 私は自分のことを不器用なのだと思う。何か技術的なものというわけではなく、他人と係わっていく世の中で、という意味においてだ。  嘘はついてはいけない。嘘も方便。どちらが正しくて、どちらが間違っているのだろう。  私は決して嘘をついてはいけないと思っているわけでもないし、嘘をついたことがないわけでもない。ただ、嘘をつくからにはそれなりの覚悟と罪悪感を持たなければいけないと思う。  『それはしょうがない』というセリフを度々耳にする。それは客観的に見た人が、嘘をついた人に対して、気持ちを和らげるために使う言葉であって、嘘をついた本人が使う言葉ではない。  どう思うかは人の勝手だが、意見を聞かれて、こう答えて、「面倒だ」と言われることがある。  それを聞いた私が愉快に思うわけがない。    そういう意味で不器用なのだと思う。人に合わせられないのではなく、合わせることを良しとしない自分。  合わせればもっと楽に生きられるのに。
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