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例の建物、という言葉に酒場がいっせいに静まり返る。ルフは困惑した様子で立ち上がり、辺りをみまわす。
「え?みんなどしたの?」
「ルフ、座れ」
普段からは考えられないほど真剣な顔をしたニールに困惑しながらも、席につく。
ニールはルフをまっすぐに見つめ、話し始めた。
「ルフ、革命軍と連合軍の戦いは知ってるな?」
連合軍と革命軍。話には聞いたことあるくらいのレベルだったが知っていることは知っていた。
「うん。だけどそれはもっと大きな国がある方での話でしょ?それがどうあの建物と関係してるの?」
「そうだ。革命軍と連合軍の戦いなんざこの村には関係ない。いや関係なかったんだ、あの建物ができるまではな。
あの建物はな、連合軍と繋がっているんだ。何をしているのかは分からねぇが奴らがあの建物に入っていくのを見たやつがいる。」
話をよく掴めずきょとんとした顔のルフの頭をわしゃわしゃと撫でながらニールは続ける。
「つまりだ、ルフ。連合軍と関係のある建物なんかに行ったりしたらどうなるかわかったもんじゃねぇ。お前はこの村唯一の子供。俺達の宝だ。わかってくれるか?」
一瞬目線を落としたがすぐに顔を上げ、すこし照れながらうん。と言った。男達はみな話の続きをはじめ、酒場はまた陽気な雰囲気に包まれる。
「ニールさん。俺、またメイを探しに行くよ。」
「そうか、気をつけていくんだぞ。」
ルフが酒場を出てくと騒がしかった酒場は静まり、男達はみた俯き始めた。
「唯一の子供...か。」
「メイもどっかへ行っちまったし、この村も人が減っていくばかりだな...。」
「ルフも可哀想だな。休みといったらああして一日中妹さがしだもんな.........10歳の子が1人で2ヵ月も生きてられる訳がないのにな...」
「しっ!ばか!そんな事言ったらまた...」
「メイが、何だって?」
身長190cmはあるであろうニールがゆっくりと立ち上がる。
「な、なんでもねぇんだよニールの旦那!」
「そ、そうだよ!なんも言ってねぇよ!!」
ニールは男達をじっと睨み再び座る。
「メイがいなくなってもう2ヵ月...か。親を失くし、ついには妹まで行方不明なんてな...」
重苦しい雰囲気を誤魔化すように男達は酒を飲んだ。
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