気づけ。

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役員の人たちにお礼を言われた後、教室へ戻ろうとすると、優奈に突然腕をひかれた。 「どうしたの?」 「またやってるの、男子…。」 その一言で察した。 窓から覗くと、男子数人が凛音くんを取り囲んでいる。 周りの生徒は遠巻きにそれを見ていた。 「くだらない。」 あたしはそう呟くと、教室のドアを思いきり開いた。 「ちょっと…葉月!?」 開閉音に驚いてか、生徒の視線があたしに注がれる。 「毎日毎日、飽きないの?しょうもない。」 クラスでは中くらいの位置にいるあたしが、上レベルの人に楯突いている。しかも相手は男子。 前のあたしなら、そんなことは絶対にしなかった。 「は?なに、お前コイツのこと好きなの?」 「良かったじゃん、女友達が出来て!」 「いや、でも好きなら百合になるぜ!なにそれ萌える。」 挑発。冷やかし。煽り。 その奥の彼と目が合う。 昨日の涙と重なる。 「そうよ。」 もう、逃げない。 あたしの声に、一瞬騒ぎの声が止む。 彼が、目を見開いた。 そこにあたしは、手を差し出す。 「行くよ。」 「は…行くって…。」 「早く!」 戸惑う彼を他所に、手を取り駆け出す。 あっけに取られる優奈を置いて、あたしたちは教室を抜けた。 再び騒ぎ出した奴なんて、知らない。
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