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「ごめん。」
謝ったのは、あたしの方。
空き教室に入り、息を整えて冷静さを取り戻した後にひたすら彼に謝っていた。
「謝らないで。」
「でも、急に連れ出したし絶対恥ずかしい思いさせたし…。」
「…うん。まぁ、恥ずかしかった。」
やっぱり!とまた謝ろうとすると突然彼が右手で顔を押さえて下を向いた。
「凛音くん?」
肩が小刻みに震えている。
「本当にごめんなさい。あたし、つい、カッとなって…!」
「違う…。いや、面白すぎて…。」
「え?」
「お前、男前かよ。今どきマンガくらいだよ。あんなシチュエーション。」
そう言うと、声をあげて笑いだした。
豪快な笑いかたに、あたしもつい吹き出した。
「どうするの。教室、帰れないよ。」
「どうしよう…。」
あたしが困った顔をしているとまた彼が笑った。
「でも、嬉しかった。」
「えっ」
「女に助けられるなんて情けないな、俺も。」
その時の笑顔に、声に、胸が高鳴っている。
いや、本当はもっと前から、意識は始まっていたのかもしれない。
「あのね。」
「ん?」
「あたし、多分、凛音くんが好き。」
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