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その日は、雨だった。
雷さえも鳴り始めていた。
教室に忘れ物をしたあたしは、薄暗い廊下を1人で歩いていた。
雨が激しくなる。
音楽プレーヤーの音量を上げる。
目を伏せて、廊下を進んだ。
何故か、なぜか
無性にイライラしてきた。
この雨も、自由の無い生活も、自分自身も、
なぜか気になる彼のことも…。
「嫌だ。」
イヤフォンをしているのに、聞こえた自分の声。
顔を上げたとき、水滴が頬に当たった。
これは、涙?それとも…。
「何してるの。」
目の前に、窓を全開にして、降りしきる雨を全身に受ける少年が居た。
「こっちのセリフだよ…。凛音くん。」
彼の前髪から、雨が零れていた。
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