歌え。

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着いたのは、あたしたちの教室。その隅っこの席に、彼の鞄が置かれている。 彼がその鞄から、1冊の小さいノートを取り出した。 「それ…。」 男子のからかいから、うずくまって守っていたノートだった。 「…俺の秘密、の一部。」 それをあたしの方へ差し出した。少し迷いながら受けとる。 「見ても良いの?」 彼が小さくうなずいたのを確認してから、ノートの表紙をめくる。 記されていたのは、 様々な言葉の表現の羅列。 「詩?」 「正確には、歌詞。」 歌詞?と問おうとして顔を上げると、目の前に黒いイヤフォンが差し出されていた。 「俺の歌。聴く?」 追い付かない思考のなかで、 あたしは、左手でそれを受け取り耳にはめていた。 彼の手元のMP3プレーヤーの、再生ボタンが押された。
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