恋のリードは譲れない

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あれから一か月、僕の散歩は毎日とっても楽しいものになった。 毎日メルちゃんがいて、ユキちゃんとカワシマくんもニコニコしていて、楽しそう。 この間、一つだけ不思議なことがあった。 ユキちゃんがいつもの電話の機械をたまに“カワシマくん”って呼ぶようになってから何日かたったころ、その“カワシマくん”にユキちゃんが“好き”って言ったんだ。 その次の日から、ユキちゃんとカワシマくんはなぜか毎日手を繋いでいる。 あの電話っていう機械は、本当に不思議だ。 人間の世界は、まだまだ分からないことがいっぱいある。 でも、僕は人間が大好きだ。 でもきっとユキちゃんたちも僕が大好きだ。 何だかそう思うと少しうれしくなって、僕は思わず走り出した。 握ったリードがピンっと張って少しよろけたユキちゃんを、カワシマくんがそっと支えた。
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