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自然と足取りが軽くなる。
そしてしっぽが勝手に踊りだす。
メルちゃんの家の前に着くと僕は急いで、柵の前まで近寄った。
「メルちゃーん!!!」
僕の声が聞こえたメルちゃんは急いでこちらに走ってきた。
「小太郎くん!どうしたのかと思った!」
メルちゃんのしっぽがぶんぶんと揺れる。
「ごめんね。実はユキちゃんのボーイフレンドがね」
ちらっとユキちゃんの顔を見ると、いつもなら僕とメルちゃんを見ているはずのユキちゃんは僕たちが元来た道をじーっと見つめていた。
「ユキちゃん、ボーイフレンドができたの?」
「えっ、あっうん。僕と散歩していると、そのボーイフレンドが前からやってくるんだ。そうするとユキちゃんはまっすぐ歩き出しちゃうんだよ」
僕がそういうと、メルちゃんは笑った。
「私、ユキちゃんの気持ちわかる」
「えっ?」
「私も小太郎くんの声が聞こえたら、慌てて外に出るもん。
それに小太郎くんに会えないととっても寂しい」
メルちゃんがあまりにもかわいいから、僕はメルちゃんの鼻をそっとなめた。
メルちゃんは嬉しそうに笑って
「協力してあげて」
と言った。
「でも、あの道をまっすぐ行くと、メルちゃんに会えなくなっちゃうんだ。ユキちゃんには幸せになってほしいけど、どうして良いか分からないよ」
「じゃあ、その男の子がこっちの道に来るようにすれば良いんじゃない?そしたら私もユキちゃんも幸せだよ」
メルちゃんはとっても頭が良い。
人間の世界ではメルちゃんみたいな子を、“聡明”っていうんだ。
「僕、頑張るね!」
「うん。頑張って。また小太郎くんが来るの待ってるね」
僕たちはそんな約束をして、さよならをした。
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