LINEグループ

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LINEグループ グループ名 MASAKI 参加人数6名 放課後の屋上 俺と亜由美と正輝 「もうすぐ夏休みだな」 「うん」 「花火大会だな」 「うん」 「良いこと思いついちゃった」 「何?」 「亜由美のスマホかして」 「何で?」 「強制退会させる」 「誰を?」 「新太」 これはほんの冗談だった 「嫌だよ! 返して! お願い龍一郎!」 俺はこうやって嫌がる亜由美を この場で面白がるだけのつもりだった 「あとで一緒に謝ってあげるから大丈夫だよ。なぁ正輝」 「おう」 食いつきの悪い正輝の反応も俺を助長させた その日の空の色は覚えていない 雲がいくつあったかなんて数えるはずもない ただ過ぎていく時間を 垂れ流すように浪費していただけ 俺は再び新太を招待し直した だけど、承認するメッセージは届かない 事態の大きさに気づくことなく迎えた翌日 知らせに来たのは正輝で 俺は亜由美を伴い 新太のクラスに出向いた 廊下から新太の名前を呼ぶと 教室の生徒たちが一斉に振り向いた そのまま彼らは、一人の生徒へ視線を移す シンクロでも見ているようにそろった動き 俺たちは導かれるように、その生徒を見た それが新太である 新太だとわかっていたけど 認識しがたい変化があった 新太は肩まで伸ばしていた髪をバッサリ切って 丸坊主になっていた 現在、中学3年の夏 引退を懸けた最後の大会が迫る中で それに対する思い入れの証なのだろう 帰宅部の俺には理解出来ない心境だった 「新太、LINEのことだけど、あれ冗談なんだ。俺が全部やったことなんだ。だから、戻って来いよ」 「悪いけど、ありえない」 「どうして?」 「うんざりしてたんだよ」 「何に?」 「亜由美」 「だから、あれは俺がやったことだから」 「そのことは関係ない」 俺と話しているはずの新太は ひどく暴力的な視線を、亜由美に向けていた 「そいつと一緒になるのが嫌だって言ってんだよ」 新太が亜由美のことをそいつと呼んだ 普段から亜由美に対してあたりが強い新太だった だから、俺はまだ冗談だと思った 「何スネてるんだよ。面倒せぇからさっさと承認しろよ」 「条件がある」 「何?」 「退会しろよ」 新太は亜由美の目を見て言った 「うざいんだよ」
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