犬とタクシー

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 これは私が某地方都市に行った時の話です。  当時まだ車を持っていなかった私は、電車を乗り継ぎ、駅でタクシーを拾い、友人の結婚式が行われるホテルに直行しました。  日本中どこにでもありそうなありふれた町並みで、見慣れたチェーン店が建ち並んでいました。  結婚式もありふれた内容で、終わった時にホッとしたくらいです。親しい友人が参加しなかったこともあり、私は二次会には参加せず、ホテルの前でタクシーに乗ってまっすぐ駅に向かいました。  私が乗っているタクシーの前に、1台の白い軽トラックが強引に割り込んできました。  運転手は舌打ちをしていましたが、その行為自体は特に気になりませんでした。  というのも目の前を走る軽トラックの荷台には、白い中型犬が首輪に繋がれた状態で座っていたからです。  舌を出しながらこちらを見つめている姿が可愛らしく、私は目を細めていました。 「かわいいですね」私がぼそっとつぶやくと、「え? 犬ですか?」と運転手はぶっきらぼうに言いました。 「・・・・・・はい」あなたのことをカワイイなんて言うわけがないだろと思いながら私は答えました。 「犬は嫌いですね。子供の頃に噛まれたことがあって、それ以来、見ているだけで腹が立ちます」 「・・・・・・そうですか」
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