那須のリゾートホテル

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那須のリゾートホテル

そのリゾートホテルは那須高原の中腹付近に位置していた。 隼人の乗ったアウディのクーペは、大通りから林の中へ進む細い道路に入った。 ホテルの小さな看板が見つけると、右折して更に白樺の林の奥へと進んだ。 ようやくエントランスが見えてきて、その奥にある駐車場に車を停めた。 エントランスからタイトなスカートのユニフォームを着た女性スタッフが小走りにこちらへ向かってきた。 「お疲れ様です。 ご予約のお客様ですか?」 「はい。 横山と申します」 「お荷物をお持ち致します」 「いえ、 このキャリーケースだけですので、 大丈夫ですよ」 「そうですか。 それではご案内致します」 彼女は隼人の前を歩きエントランスの前でドアを開けた。 中は全体的に暗めの壁に、木材を活かした自然の作りで、まだ午後3時過ぎなのに照明のせいもあるが落ち着いた薄暗さだった。 館内にはシューベルトのピアノソナタが流れている。 革張りのソファーに案内されると、地産のハーブを利用したよく冷えたハーブティーがウェルカムドリンクとして運ばれて来た。 喉の乾いていた隼人は、ミントの爽やかな風味のハーブティーを一気に飲み干した。 「横山様、 お待たせ致しました。 本日、おひとり様でご一泊のご予約で間違いございませんでしょうか?」 「はい。 間違いありません」 隼人がサインをしてチェックインの手続きが済むと、同じ女性スタッフが部屋まで案内をしてくれた。 本館とは別に離れの個室で、部屋にはそれぞれ掛け流しの温泉の浴槽が付いている部屋だ。 割と背の高い女性スタッフの後ろ姿を、目で追いながら後をついて行く隼人の頭の中では、 彼女がエレナであったら…という妄想が短い時間の中で過大に膨らんだ。 そして夜になったらエレナにLINEを送ろう…そう思った。
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