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エピソードの一区切りついた所で、隼人は部屋にある浴槽に入る事にした。
多少熱めの湯に身をつけていると一気に眠気が押し寄せてきた。
このまま寝るのは勿体無い…そう思い直して風呂をでた後、冷蔵庫に用意されていたハーフボトルの、今度は白のワインの栓を開けた。
ボトルとグラスを持ちベッドに腰を下ろし、iPhoneを手に取った。
ホームボタンを押して、数通のメールを確認した後、LINEを開いた。
LINEに新しいメッセージは入ってないのを見ると、少々気を落としたが、エレナのトーク画面を開いて思い切ってメッセージを打った。
「こんばんは。
起きてますか?」
時計を見ると既に11時近くになっていた。
エレナからの返信は直ぐきた。
「こんばんは。
うん。起きてるよ」
「今、話せる?」
「うん。
まだ主人は起きてるけど、書斎で執筆中なので大丈
夫。
隼人さんは大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だよ」
「お仕事、夏休みでしょ?」
「うん。
今日から6日間の休みだね」
「そっかぁ。
奥さんと何処かに行ったりしないの?」
「かみさんは実家の岡山へ帰省してて、
俺は今、那須の温泉で保養中…」
「ひとりで?
それも、保養中って…笑」
「なんだよ?
年寄り臭いとでもおもったな?」
「ばれた?
でも、羨ましいなぁ…温泉」
「だろ…。
今からこっちに来いよ」
「迎えに来てくれたら行ってあげてもいいよ
^_^ 」
「じゃぁ、無理だ」
「ケチ!」
「旦那さんは夏休みも関係ないんだね?」
「そうね。
お休みがあってない様なものだから…。
でも、今の原稿が終われば少し休みが取れるから、 何処か行こうって言っているよ」
その言葉に隼人の心が甘酸っぱく嫉妬に似た感情が走るのを感じた。
でも、それはある意味新鮮だった。
もう何年も…いや、何十年も忘れていた感情だ。
「そっかぁ。
早く仕上がるといいね」
「那須ってどんな所?」
「俺は好きだよ。
温泉もあるし、夏は過ごしやすいし、美味しいもの もあるからね」
「へぇー。
そうなんだ。
行ってみたいな」
「旦那さんに連れて来て貰えば?」
「そうね。
今度聞いてみる。
今何してるの?」
「ワイン飲みながら、エレナにLINEしてるよ…ベッドの上で」
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