那須のリゾートホテル

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いつもならエレナを抱く流れだが、今夜はまだ旦那が起きているのでそういう訳にはいかなそうだ。 「ちょっと待って、 私もワイン開けるから」 そう言って2、3分後、 「今夜は白を開けた」 「やっぱり気があうな。 今夜は俺もソアーヴェ飲んでるよ」 「そうなの? それじゃ、先ずカンパイ!」 隼人は冷えたワインを口に含んだ。 「隼人さんにとっては久しぶりの長いお休みね?」 「そうだね。 エレナは長い休みに慣れた?」 「うーん…どうかな ^_^; 今さらだけど、 でも、今だからか思うのかもしれないけど、 結構、働いていた自分が好きだったな」 「それでも辞めた」 「うん。 確かに会社は辞めたけど、 仕事は好きだったと思うの。 それに、ある程度やりきった感もあったし」 「やり甲斐は感じていたんだね」 「うん。 1つのプロジェクトが終わった時の達成感とか、 絶対に乗り越えられなそうな障害を スタッフと一緒に解決できた時の一体感とか、 そういうのは好きだった」 「その感覚は凄く分かるな。 達成感とか、一体感とかは。 最近は感じられなくなっちゃったけどね」 「そうなの? なんで?」 「今は会社も仕事も、 俺が何かしなくても一人歩きしてる感じでさ」 「それっていい事だよね?」 「そうだね。 会社的には成長期を過ぎて、 今は安定期に入った感じかな」 「それじゃ、 隼人さんに向上心が無くなったの?」 「うーん… そうとは言い切れないけど、 今はある程度の技術や信頼があって、 うちのスタッフがそれを引き継いで、 向上心を持ってやってくれてるよ。 いつまでも、俺が先頭に立って頑張っていたら、 スタッフが伸びないからね」 「なんか隼人さんに大人を感じた」 「今までは感じていなかったのかよ!」 「そうじゃないけど、 こうやってマジマジと仕事の話って してなかったでしょ」 隼人は調子に乗って話を続けた。 「我々の業界って、 華やかじゃないから極端に大儲けできたりはないけど、 その代わり一度安定すると土台がしっかりするから ちょっとやそっとじゃ大崩れないんだよね」 「そうなのね。 それで、今の隼人さんは会社が一人歩き始めちゃって、 手持ちぶたさになっちゃった?」 「正にそうだね」 「もう、目標とか夢とかは無いの?」
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