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「いつ?
泊まりなの?」
「21日の木曜日で一泊だって」
「うーん」
それ以上、隼人は何も言わない。
しかし、隼人が何を思っているのかが明らかに分かった。
「隼人さん、
怒ってる?」
「なんで?
怒る意味はないだろ?」
「旦那が出張なのに
あえて、会わないって言ったから」
「確かにちょっとがっかりしたけど、
それはエレナが自分自身にブレーキをかけたかったからだろ?」
確かに会いたい気持ちの裏腹に、直樹に対する裏切りの念は消せない。
「隼人さん」
「なに?」
「 わたしの気持ち通じてる?」
「理解してるつもりだし、
俺も同じ気持ちだよ。
そして、それを受け止めるよ」
「まだ、
会った事もない隼人さんに、
なんでこんな想いになるのかな?」
「本当だね。
きっと
今まで交わしてきた数え切れない言葉達が
お互いの心に蓄積されてるんだろうね」
直樹にも、家族にも話した事のない話をエレナは隼人にだけは打ち明けられた。
それは逆に顔の見えない相手で、
打ち明けても害はないと思っていたからだろう。
しかし、それがかえって心を許してしまう事になったのだ。
もう、後戻り出来ないくらいに溺れてかけていた。
「今さ、
iPodからAdeleが流れてるの」
「いいね」
「ううん。
無理…。
今はまともに聴けないよ」
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