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3年後の秋・エレナの夜
隼人からの返信は月曜日の深夜に届いた。
自分の送ったメールに対して隼人がどのように思い、
それに対して、果たして返信があるのか…
半信半疑のまま1日過ごした後だったので
そのメールに喜びを感じたのは隠しようのない事実だった。
エレナ、
遅くにごめん。
何度も打っては消して、消しては打って、
昨夜から同じ事を繰り返して来たけど、
やっぱりどうしても、もう一度しっかりと謝りたくてメールします。
2年半の時間が経ったとは言え、
俺の過ち…誤ち?いずれにしても、エレナを傷つけてしまった事に心から謝ります。
あんな現実にはあり得ない偶然の出来事の為にお互いの関係が、あっという間にもろく崩れ去ってしまった事に対して、本当に残念で…どんなに悔やんでも修復の手立ては思いつきませんでした。
それでも、この2年半の日々の中で君を思わない日は1日足りともなかったよ。
今、
何をしているだろう…
何を考えているだろう…
どんな音楽を聴いているだろう…
どんなワインを飲んでいるだろう…
そんな想像や妄想をするだけで、胸が締め付けられるような切ない思いで、目頭が熱くなる日々を重ねて来ました。
今更かも知れないけど、
俺は、心から君を慕っていて…君の言葉に癒され、元気付けられていたんだなと思っています。
エレナの言うように、
あのままどっぷりと2人の世界に身を委ねていたら、
いつか何処かで…どちらかにほころびが出来て、パートナーを巻き込んだ最悪の事態になったかも知れないね。
そう考えると、あんな結末で終わってしまったけど
俺が言うのも何だけど…
結果的に良かったのかな。
今、
エレナに色々な事を聞きたい。
色々な事を伝えたい。
でも、それはかえってエレナを苦しめる事は分かっているから、
我慢します。
でも、
もしこの先、何かに躓いたり、
耐え切れないくらい辛い事があった時のために、
私のこのアカウントを残しておいてくれませんか?
もちろん、無理にとは言えません。
心から君の幸せを祈っているよ。
隼人
エレナはスマホの文字が涙で滲んで見えた。
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