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ろくに干さねえ黄ばんだせんべい布団が視線の先の先までずーっと続いてる。 上を向けば見たこともねえような高い天井。 床には箪笥を横倒しにしたみてえなどでけえ本がごろごろ。 一体どうしちまった。 俺の頭がおかしくなったのか。 それともただの夢か。 共同便所までひいこら走って、やけに身軽になったような身体でぴょいと洗面台に乗ってよ、鏡見ておったまげたね。 カエルなんだ。 俺が映ってねえ。 そこには一匹のぬらぬらしたま緑のカエルが映ってるのよ。 何の因果か知らねえけどよ、その日の朝から、 俺はカエルになっちまったんだ。 それでもよ、それから何日かはちゃんと大学に通ってたんだぜ。 こんな俺でもあんときゃ真面目な法学生だったからね。 これは自分の身に降りかかったわけのわからねえ災難。 神様が誰か別の奴にかけるつもりだった魔法がとんだ手違いで俺んとこに来ちまったんだって。 すぐに元に戻るだろうと信じてたんだ。 ねとっとした面さげて大学へ行ってよ、他の奴らに見つかってきゃあすか言われちゃかなわねえ。 教室のくず入れの陰にちんまり隠れながら真剣に教授先生の話聞いたよ。 でも馬鹿馬鹿しくなっちまってな。 何が弁護士だ。 だって見たことあるかよカエルの弁護士先生なんてよ。
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