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―今でもよ、ちぃちゃい女の子が道端でボール遊びなんかしてると、あん時のことが蘇るのよ。
ぽーんと転がったビニールボールをおっかけて、嬢ちゃん、あの池のほとりへ寄ってきたんだ。
あの日も一人で遊んでたんだろうな。
資産家の娘でね。
兄弟がいなかったから、だだっ広い庭でよく一人遊びしてたよ。
それでも池へなんてめったに来なかったから、嬢ちゃんの顔はっきり見たのはそん時が初めてだったんだ。
可愛かったぜ。
おかっぱに切り揃えて、目なんかくりっとしてよ。
俺ぁちょうどそん時晩飯食い終わったところでよ。
ワラジムシでくちくなった腹撫でてうとうとしてたんだ。
なんかよちよち可愛いのがこっち来るなぁと池から顔出してぼーっと見てたらよ、ボチャンて大きな音立てて、ボールが池ん中沈んじゃった。
嬢ちゃんびっくりしてすぐに泣き出しやがる。
なんだなんだってアメンボの野郎も岩の下のダンゴムシ一家もびびっちゃった。
そん時、ピンと来たんだ。
こいつぁチャンスだぞって。
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