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「本当?」
「ええ、本当ですとも。
そのかわり…」
ここだ、そう思って切り出した。
待ち望んでた交渉だ。
大事な局面だよ。
いやあん時はさすがの俺も心臓がばくついたね。
ミルク臭いがきんちょでもこの際かまやしねえ、どうにかしてこいつに取り入れれば、人間に戻れるかもしれねえんだもの。
「僕がボールを取ってくるかわりに、あなたにひとつ
お願いを聞いてほしい」
「お願い?」
嬢ちゃんは身を乗り出した。
俺ぁいよいよ腹決めて、こう切り出したんだ。
「僕と、お友達になって下さい。
あの大きなお屋敷のあなたの部屋に、住まわして下さい。
テーブルを挟んであなたと向かい合わせに座って食事をして、あなたのベッドで一緒に眠る。
そんな親しい友達になりたいのです」
嫌がると思ったらなかなかどうして。
ちぃちゃい女の子てのはみんな好奇心旺盛なのかね。
ええいいわよなんてはしゃいだ声で言ってよ、カエルみてえな素っ頓狂な友達ができることをむしろ喜んでたよ。
こりゃ話がはええやってんで、俺ぁすいっと池に入って、ボールを取ってきてやったさ。
それから約束通り、俺は嬢ちゃんの住むでっかいお屋敷にご厄介になることになったんだ。
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