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気が向くまま、無邪気に6年生の教室へ行って無理矢理遊んでもらったりしていた、憂いのない毎日が遠く懐かしい。
そんな私も、今年ようやく高校一年生になった。もう、あんな小さな存在ではない。
翔太くんが小学校を卒業してからの9年間、私はずっと、時折すれ違う翔太くんに対して、挨拶よりは踏み込んだ会話を交わしてきた。遠ざからないことを目的とした、予防弁としての消極的積極性ながら、それでも何とか、ご近所付き合い以上の関係を築けてきたと思う。
翔太くんの方も、節度を保ちつつ親しげな対応をしてくれた。
いつも男友達に囲まれていた翔太くんは、穏やかながらも中学生活を楽しんでいる様子で、しかしそんな何気ない顔をしながら県内有数の進学校に入学し、同じ調子で大学に進んでいた。
小学低学年から見る中学生もかなり隔たった存在だったけれど、中学2年の時に大学生な翔太くんを見たときの衝撃は半端なかった。『隔たり』なんて壁一枚めいた表現では到底足りない。
それでも私は、翔太くんが好きだった。
そうしてようやく、私も高校生になったのだ。高校生なら、もう大学生の相手として認めてもらえるのではと、私は浮かれていた。
しかし、そうそう都合の良い展開にはならないようだ。
私は、翔太くんが女の人と歩いている姿を、とうとう目にしてしまった。
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