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「うずらも元気、はいありがと~」
長時間触り続けることはなくあくまで体調管理のために触って確認し、すぐにケースに戻す。慣れることはあっても懐くことはない爬虫類にとって長時間人間が触り続けることはストレスになるらしい。
「うずらからはじまって、フトアゴのうにちゃん、ボールパイソンのパインまで来た頃にはもう爬虫類の虜だったね」
「……ケースの外から見てるだけなのに、楽しいの?」
彼女の手から降りたうずらはゆったりとした動きで隠れ家のために置いてあるシェルターの中に引きこもり、顔すら出さない。これではぱっと見ただの空のケースだ。
「うずらはね、シェルターの中が大好きなの。電気消しててもなかなか出てきてくれない。うにちゃんはどれだけレイアウト凝っても保温球の下で一切動かないし、パインなんか餌の時しか出てこない」
さっきから一つもメリットが出てこない説明に首を傾げると、彼女は部屋一面に設置されているケースをぐるりと見渡し、最後に僕を見て微笑んだ。
「でもね、そういう子の方がちょっとした仕草でもどうしようもなく可愛くて、愛おしく思えるの」
「……そんなもの?」
「そんなもの。いつか分かってもらえると嬉しいなあ」
ここにいる彼女の家族たちに負けたのかと思うと少し悔しい所はあったが、そう語る彼女は今までで一番生き生きしていて幸せそうだったので、せっかくの休みの日に家族たちを眺める時間が減ってもかわいそうだろうと思い、早々に退散することにした。
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