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「……」  ぺろりと舌で口の周りを舐め、不思議そうにじっとこちらを見つめる。こちらも負けじと見つめていると、不意に口を開けた。  くあ、と。 「……っ!」  なんでもないようにあくびをした。そのままもういちどシェルターの中に引っ込んでしまったヒョウモントカゲモドキをひたすらに目で追う。今までで感じたことがないほど心臓が高鳴っているのが自分でもよく分かった。  一度コーナーから離れ、店からも出て携帯を出す。履歴から彼女の名前を探してすぐに発信を押した。  数コールと少しでつながった電話口からは、不思議そうな声が聞こえた。 「ねえ、レオパってすぐに飼えるかな」 「どうしたの、急に」  今までなら女性に電話をかけるなど緊張して画面を見ながら十分はにらめっこしていただろう。それさえも気にしなかった。これは、この気持ちは。 「どうしよう、僕も……一目惚れしちゃったみたいだ」  はしゃぐ彼女の声を聞きながら震える手で胸を押さえる。なんでもないようにあくびをした、性別もまだ分からない小さな命に、どうしようもなく惹かれてしまっていた。  親を安心させてやれるのはまだ先になるかもしれない。
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