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「…んぁ……ふぁー…」
広いベッドの上で、伸びをする。
肌と布団が擦れる感覚にはっとして、ちらりと中を覗いた後、俺は、はぁーっ、と深く息を吐き出した。
「暁(アキ)…」
ぽつりと零れた名前に、返す返事などあるはずもなく。
軋む腰に鞭打ちながらシャワー室へと向かう。
情事の後とは思えない綺麗な身体に、暁の残酷な優しさを改めて思い知る。
…どうして俺たちの関係は狂い始めてしまったのだろう
頭からお湯を浴びながら、ふとそんな事を思う。
講義室にいるどんなに可愛い女の子よりも、彼を探して視線を向けてしまう事に気付いたのは、3ヶ月前。
確信に変わるにつれ、擽ったいような喜びと同時に絶望が降ってきた。
俺は男、暁も男。
単純な、しかし決定的で有無を言わさぬ事実が、俺の心を締め付けた。
『渚、愛してるよ?』
頭の中を、暁の言葉が支配する。
…分かっている
それが本当の言葉ではない事くらい。
気持ちに漬け込まれて、欲望の捌け口として利用されている事くらい、痛いほどに理解しているのだ。
「…壊してよ」
ぽつりと、本音が零れた。
「中途半端にするくらいなら…いっそのこと心まで壊してよ…っ!」
頭では分かっていても、身体を重ねる度に期待してしまう。
愛してるのその先を。
本当に、心から愛してるという言葉を。
…全て無駄な筈なのに。
暁の偽りの言葉は、俺には甘過ぎる。
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