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「はぁ…学校、行こ」
鞄を持ち、腹ごしらえもそこそこにマンションを出る。
歩いて学校に着く頃には、俺の心は決まっていた。
…最後に、するんだ
きっと今日もアイツは家にやってくるから…だからもう今日でこの関係を終わりにする。
セフレの関係を引き摺って傷付くくらいなら、自分から断ち切って忘れてやる。
「渚、今日…いいよね?」
「…あぁ」
主語を伏せた暁の言葉に、いつものように素っ気ない返事を返す。
暁は俺が席を確保すると暫くして、講義室に入ってきて俺の横に腰掛けた。
「何、怒ってるの?」
「…別に怒ってねェけど」
「…そう」
軽く返して前を向く暁。
黒髪が靡いて、ふわりと甘い香りが鼻を掠めた。
華奢な身体、細い指、綺麗な二重に長い睫毛、整った顔立ち。
…惹かれる所なんて、挙げたらキリが無い。
一体何人を抱き、何人に抱かれてきたのだろう。
一体どうして、こんな平凡な俺なんかの所にいつもやって来るんだろう。
一緒に居る最後の姿を焼き付けるようにして、俺は目を逸らした。
*
「暁、飯は」
「食べて来た」
暁は、夜が更けた頃にやってきた。
慣れた動きでソファに座り、誘うようにポンと横を叩く。
いつもならすぐ横に行くのだが…今日は立ったまま、暁を見つめる。
俺の決意が揺らがないうちに、俺の想いを伝えてしまおうと思った。
「渚?どうしたの?」
「……もう、終わりにしよう」
暁は静かに俺の言葉を受け止める…と、思っていた。
「…どういう、こと?」
思いの外震えた声が返ってきて、俺は動揺する。
暁の瞳は少し揺れながら俺を見ていた。
「…もう、我慢できないんだ。いくら身体を重ねたってお前の気持ちはーーーんっ…」
言い終わる前に、唇が塞がれた。
そのまま机の上に押し倒され、背中がミシ、と嫌な音を立てる。
「なん、だよっ!」
じたばたと暴れる俺を、驚く程強い力で暁が押さえつける。
下から睨みつけると、ぽたぽたっ、と冷たいものが2つ俺の首に落ちてきた。
「…何で」
何で、暁が泣くんだよ…?
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